情報通信学会の「モバイルコミュニケーション研究会」の集まりに参加してきた。会場は東京駅すぐのサピアタワーの中にある関西大学東京センター。
話題提供はNTTドコモコンシューマサービス部の前田義晃さんと、慶應義塾大学政策・メディア研究科の天笠邦一さんの二人。発表内容は以下の通り。
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第一報告「コンシェルジュ携帯電話について」
前田義晃氏(NTTドコモ コンシューマサービス部 ネットサービス企画担当部長)
第二報告「少子化時代のモバイルコミュニケーションの可能性−子育てサポートネットワークの構築・維持におけるケータイの役割と効果−」
天笠邦一氏(慶應義塾大学大学院、政策・メディア研究科)
近年、携帯電話の新しいサービスが次々に登場している。その中のひとつが携帯電話のコンシェルジュ化であり、携帯電話が秘書や執事、コンシェルジェになるサービスとして注目を集めている。それは、ユーザーの趣味趣向に合わせた情報を携帯電話に自動的に配信・更新してくれるサービスである。契約者も順調に拡大しているという。
第一報告として、NTTドコモ コンシューマサービス部ネットサービス企画担当部長の前田義晃氏を迎えて、同社の携帯電話向けサービス「iコンシェル」について、サービスの概要と今後の展開についてご報告をお願いする。
コンシェルジュ化は携帯電話による生活行動支援であるが、携帯電話の普及は子育てを取り巻く社会的な環境を一変させた。特に、子育てや家事を行いながら、相手の状況にも気を遣わず連絡を取り合うことが出来るケータイメールやモバイルSNSは、子育て中の母親たちに広く受け入れられ、子育てにおけるコミュニケーション環境に革命をもたらしたといえる。
第二報告では、天笠邦一(慶應義塾大学大学院、政策・メディア研究科)に、未就学児を持つ親を対象に行った量的・質的調査からケータイ利用によって子育てという社会的実践に起こった変化について報告をお願いする。
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DoCoMoのトルカを使ったサービス、iコンシェルのサービス展望について詳細にうかがうことができた。DoCoMoのシェアは現在52%で、そのうち %がiコンシェルを契約しているとのこと。
iコンシェルは、登録しておけばエリアや時間に関連した情報を端末にプッシュしてくれる。すでに2008年度の数値で、DoCoMo利用者は1日平均57.6PV(ページビュー)たたきだすとのこと。
PVなので、何かサイトを開いてどっかリンクを押すたびに数値はのびていくのだが、一人あたり57.6/日という数に驚いた。モバイルでmixiなどのSNSを利用している若者などであればかろうじて理解できるけれども、DoCoMo利用者は中高年層も他のキャリアにくらべて多い(と思う)。私が勝手に想像していたよりも、はるかにモバイルリテラシーは高いし、モバイルで情報収集するのは老若男女に普及している。
このようなケータイ利用状況であれば、より簡単に情報が受け取れるiコンシェルは、解約率も低いまま利用者が増えていることにも頷ける。
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天笠さんの発表は、子育て支援センターのような、育児中の親が子を連れて自由に出入りできる施設でのエスノグラフィと、幼稚園保育園で実施した未就学児を持つ親へのアンケートの結果報告。
子育て支援センターでのエスノグラフィが特徴的だった。あわせて同じ市内で量的な質問紙を700人以上に実施しているので、質的調査で得られた知見の裏付けもできそう。
子育て支援センターには、曜日や時間の制約はあるものの、誰でも好きなように参加できる。担当の職員もいて、適宜指示をすることもあるようだが、基本的には親どうしのコミュニケーションの場で、子どもは自由に遊んだり寝たりしているようである。
出入りが自由とはいえ、ものすごい人数でごったがえすことはない。また、「顔見知り」の関係が構築されてきて、グループによってはmixiのコミュニティで連絡をとりあって集まったりもしているようだ。
そうなると、完全な開放性をもった場とは言い切れなくなる。非常にゆるい閉鎖性を伴う場になるように思えた。育児支援関連施設は、そういう場であると思う。
mixiで集まった10名弱の母親は、特にみんなでわいわい騒ぐわけでもなく、淡々と子どもとともに過ごしているようである。母親どうしの会話も敬語。mixiのようなメディアが育児に入り込んできているのは今日にはじまったことではないだろうが、子育て支援センターの持つ(情報)空間の構造=アーキテクチャが、mixiのアーキテクチャと重なるようにも見えた。
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子育て支援施設のようなリアルな空間では、次第に顔見知りの関係ができて、ゆるいながらもメンバーシップを獲得することができる、と思う。最初は誰かの知り合いだとか、そういったツテがあった方が入りやすい。非常にゆるいながらも、心地よい閉鎖性が構築される。
そんな心地よいリアル空間の閉鎖性は、バーチャル空間に広がるmixiの心地よい閉鎖性とも重なる(ように私には見えた)。
どんなリアルな(社会情報)空間の構造に生きているのか、ということと、バーチャル空間で利用しているアーキテクチャが似ているように見えて、それがユニークだ。どんあメディアを選択してコミュニケーションをとるかということが、その人が生きているリアルな(情報)空間のアーキテクチャに依存しているように思えた。
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また、母親へのインタビューで、「オフ会」という言葉がでていたのも興味深い。「オフ会」というと、例えば2ちゃんねるだったり、もしくはオタク的なネット上の活動との親和性を想起する。
ちゃんと調査していないけれども、一昔前のオフ会は、ネット上のアイデンティティとともに形成される集まりだったように思う。オンラインのアイデンティティのまま、オンラインの知り合いとリアルな空間でコミュニケーションをとるための集まり、として認識していたように思う...
しかし子育て支援センターの事例はじめ、各種オタクなどの今日的なオンライン/オフラインのアイデンティティマネジメントをみると、リアルとバーチャルの区分が比較的薄い。程度の差はあれ、オフラインのアイデンティティをどこかで引きずりつつ、オンラインでのアイデンティティを形成しているようにみえる。
オタクだけではなく、一般の人でも、リアル/バーチャルのハイブリッドな空間に否応なく生きながら、アイデンティティをコントロールしているのではないかと思い、非常に刺激的だった。